「パペット落語」の創始者として、国内だけでなく、世界の紛争地帯やスラムなどで公演を続けてきた上方落語家・笑福亭鶴笑さんが2月1日、経堂駅北口の「さばのゆ」(世田谷区経堂2)で関東では初めての「パペット落語教室」を開催した。
100円ショップで購入した柄杓を改造した笛を演奏する弟子のぱくふ亭笑音さん
正午に始まった同教室には、パペット落語のパフォーマーを志す5人が参加。参加条件はオリジナルのネタを作ってくること。鶴笑さんがパペット落語の基本を伝えた後、各自が高座でネタを披露。その後、個別の講評や指導が行われた。
鶴笑さんは「パペット落語は世代や国境を越える笑い。これまでイラクの紛争地帯やアフガニスタン、東南アジアのスラムの病院やストリート、国内では病院、老人ホーム、児童養護施設などで公演を続けてきた。分かったのは、どんな厳しい場所でも笑いがあれば、誰もが優しい気持ちになり、いじめや差別もなく、一つになれるということ。決して簡単ではないが、この表現方法を一人でも多くの人に正しく伝えたい」と教室の意義を話す。
教室終了後15時から、経堂こども文化食堂に参加するシングルマザー家庭の親子や一般客も加わり、「パペット落語会」がスタート。
冒頭、未就学児童が号泣する場面があったが、鶴笑さんはユーモア絵本の読み聞かせで泣き止ませ、90分間、弟子のぱふく亭笑音さんと共に2歳から70代までの観客25人を絶え間なく笑わせた。
笑音さんはパペット落語版の「住吉駕籠」や100円ショップで購入した日用品を改造した笛の演奏、のこぎり音楽などを披露。鶴笑さんはパペットの弟子、笑福亭つる吉を操って「いらち俥(ぐるま)」、そして、トリで2030年までに持続可能な世界をつくるために国連が2015年に採択した開発目標SDGsをテーマにした環境保護応援落語「ゴミ怪獣」を熱演した。
こども食堂のママの一人は「子どもも私もずっと笑っていた幸せな時間。最後の『ゴミ怪獣』は、地球を破壊しようとするゴミ怪獣が人間をマインドコントロールして開発だ、開発だと環境破壊をさせ、大気汚染で地球温暖化が進み、土地開発で森が無くなり、杉の木モックさん一本に。そして、モックさんと一緒に子どもたちが地球を守る。難しいテーマなのに、森の大切さや環境破壊の深刻さなどが子どもにも伝わる素晴らしい内容だった。こういう笑いがもっとテレビでも見られるようになってほしい」と感想を話す。
鶴笑さんは「小さな子どもたちも一緒になってゴミ怪獣と戦ってくれたのが印象的だった。最初から最後まで笑い声が聞こえて、世代や立場の異なる人たちが一つになり、パペット落語の力を発揮できたと思う。教室には片道2時間かけて来る人もいて、皆さんの熱意を感じた。2回目を開ければ」と意欲を見せた。