現役の東京農大生3人が10月20日、焙煎(ばいせん)緑茶の普及を目指してクラウドファンディングを始めた。
メンバーの細谷日佳理さん、前山未羽さん、佐藤瑞保さんは全員が東京農業大学・国際食料情報学部の3年生。細谷さんの祖父母は15年前に閉店するまで約50年間、札幌で「お茶の細谷園」を営んでおり、今回の焙煎緑茶は、当時の味を再現し、急須用の商品に加えてティーバッグ式の商品も開発した。
細谷さんは「子ども心にもおいしく感じた祖父母の店の甘みのあるお茶が忘れられず、2020年、『お茶の細谷園』を復活させる活動を始めた。祖父のオーダーに応えて焙煎緑茶を製造していた静岡の丸松製茶場を訪れると、まだ祖父のことをよく覚えていてくれて、静岡茶の葉肉の厚い茶葉の特徴を生かし、蒸し・火入れを強めた製法で仕上げる当時の味の再現に協力してくれた。商品を作り、ネット上でお店を再開して通販を始めたが、活動を始めてみると、製茶業界が高齢化や一般の人々のお茶離れによって厳しい状況下にあることが見えてきた。それで、私たちのような若い世代が何かしなければと思うようになった」と、今回のクラウドファンディング立ち上げの経緯を話す。
1年の時から農業サークルに参加して、作物に真摯(しんし)に向き合う農家の人たちを間近に見てきた前山さんは「おいしいお茶を知らない人が増えると、お茶の需要が減る。すると、お茶農家も減り、お茶の文化が衰退してしまう。本当のお茶のおいしさを一人でも多くの人に知ってほしい」と呼び掛ける。
祖父母が農家を営む佐藤さんは「幼い頃から祖父母の手伝いをしてきたので農業が身近だったこともあり、日本の農業を何とかしないと、という気持ちがある。前山さんとSDGsのアイデアソン本選にも出場したことがあり、新しいことをしたいと考えていた時に細谷さんの活動を知り、一緒に挑戦したいと思った」と参加理由を話す。
リターン商品は、2021年一番茶が原料の「和火【WAKA】」と2020年一番茶が原料の「火扇【KAOU】」の2種類。それぞれ、ティーバッグ式と急須式の2種類を用意する。
「どちらも祖父がこだわった焙煎を施した特蒸し茶。和火【WAKA】は、食事を引き立てる和やかな味わい。火扇【KAOU】は、製茶場の冷蔵庫で半年程度寝かせた蔵出し商品。冷蔵庫で寝かせることで、まろやかな味わいになっている。ティーバッグの素材には環境に配慮して、完全生分解性の素材、ソイロンを使っている。急須がない家庭でも安全においしいお茶を楽しんでもらえる。おかげさまで、クラウドファンディング1週間で最初の目標に到達した。これで満足せず、チャレンジを続けたい」と3人は意気込む。
クラウドファンディングの締め切りは11月20日。