下高井戸シネマ(世田谷区松原3、TEL 03-3328-1008)で2月19日から、イラン映画の巨匠アッバス・キアロスタミ監督作のデジタル・リマスター版7本を上映する特集「そしてキアロスタミはつづく デジタル・リマスター版特集上映」が行われる。
「桜桃の味」1997年 イラン・フランス ©1997 Abbas Kiarostami
1970年代に映画作家としてのキャリアをスタートしたキアロスタミ(1940~2016年)は、1979年のイラン革命後も映画を撮り続け、「友だちのうちはどこ?」(1987年)、「そして人生はつづく」(1992年)、「オリーブの林をぬけて」(1994年)の3部作で評価を高め、「桜桃の味」で1997年のカンヌ国際映画祭パルムドール、「風が吹くまま」で1999年のヴェネツィア国際映画祭審査員グランプリを受賞した。
人生は果たして生きるに値するほどのものか否か――という根源的な問いをストレートに投げ掛ける「桜桃の味」が日本で封切られたのは1998年のこと。ごく当たり前の日常を切り取りながら、奥行きのある作品だとして話題になり、旧作を含めたキアロスタミ監督作品がミニシアターなどで盛んに上映された。
「友だちのうちはどこ?」は、イラン北西部の山あいの田舎が舞台。タイトルの通り、友達が忘れていったノートを届けるために、村のジグザグ道を走る少年を描いたもの。子ども時代の純粋さや不安を思い出させてくれる作品。「そして人生はつづく」は、1990年に起きた地震により大きな被害を出した「友だちの家はどこ」の村を再訪して、映画に出てくれた少年たちのその後を追ったロードムービー。「オリーブの林をぬけて」は、震災の2日後に結婚したという若者たちの姿を、役者を立てて再現したもの。「ジグザグ3部作」とも呼ばれるこれらの作品は、キアロスタミやイラン映画の愛好者にはよく知られている。
ほかに、サッカーに夢中の少年の冒険を描いた「トラベラー」(1974年)、宿題をテーマにしたドキュメンタリー「ホームワーク」(1989年)、クルド系の小さな村を舞台にした「風が吹くまま」(1999年)を上映する。
上映期間は2月19日~3月4日。スケジュールはホームページで知らせる。
同館は、館内でのマスク着用の徹底、整列時に間隔を空ける、ブランケットの貸し出し休止、消毒液の設置、大声でのおしゃべりの禁止、上映作品の入れ替えごとに換気の実施、発熱や咳(せき)など体調不良の人の入館禁止など、観客とスタッフの感染症予防対策を徹底して営業している。