宮城県の水産加工会社・木の屋石巻水産が、4月に起きた北九州市の旦過市場火災の復興活動を経堂駅北口のカフェ「さばのゆ」(世田谷区経堂2)で始めて1カ月がたった。
今年で創業65年を迎える同社は、創業時からくじらの大和煮缶を製造。1998(平成10)年に石巻港に揚がったサバやイワシ、サンマなどの魚を刺し身にできる鮮度で手詰めするフレッシュパックの技法を導入。2000年台に入ると、石巻のブランドサバ、金華サバの缶詰などが地元を中心としたメディアに取り上げられるようになったが、2011(平成23)年3月11日に起きた東日本大震災の津波被害により海岸から150メートルの場所にあった本社・工場は壊滅した。しかし、震災前から同社の缶詰を仕入れてメニュー化する飲食店が多かった世田谷区経堂の個人飲食店関係者が復興応援の活動を開始。その取り組みは、支援物資を集めてトラックなどで石巻に運び、物資を避難所などに届けた後、同社の工場跡地に埋まっていた泥まみれの缶詰を経堂に持ち帰り、さばのゆや陶芸教室「まだん陶房」の前で洗って義援金と交換するもの。一連の様子は、東京発のメディアで取り上げられ、SNSでも拡散され全国的に知られるようになった。4月末からは石巻でも缶詰を洗うことが可能になり、全国から注文が集まり、同年中に20万缶以上の缶詰が義援金と交換され、2013(平成25)年の工場再建、2015(平成27)年の売り上げ回復に至る同社復興のきっかけとなった。
同社営業の鈴木誠さんは「実は、震災後の大変な時期にものすごく助けてくれたのが北九州の人たちだった。小倉駅前のカフェカウサでは、落語会や缶詰手巻きずしなどのイベントを通じて、たくさんの缶詰を義援金と交換してくださった。鍛冶町のKEN’S WINEが企画した永照寺での落語会でもたくさん売っていただいた。中でも、2012(平成24)年5月、若松の老舗料亭『金鍋』で開かれた上方落語の桂吉坊師匠のチャリティー落語会では、他社の工場での委託生産が始まっていた缶詰を、集まった行政・財界・飲食店など市民の皆さまにたくさん求めていただき、『釣りはいらない』という人も多く、たくさんの応援を頂いた。そうしたことがあったので、今回の旦過市場の火災被害には居ても立っても居られず、経堂に缶詰を届け、チャリティーを始めることにした」と経緯を話す。
木の屋石巻水産の缶詰は3缶1,000円で販売し、売り上げ全額を義援金に充てた。6月に入ってからは、他の缶詰メーカー、極洋(東京都港区)や高木商店(茨城県神栖市)、缶詰と防災米のコラボを以前から行ってきたアルファー食品(島根県出雲市)も商品提供を行い、6月末現在、北九州市がホームページで告知する「復興応援義援金」の窓口となる銀行口座への入金額は25万6,750円となる。
さばのゆに集まった義援金と交換する缶詰など商品の在庫は終了したが、今後もチャリティーイベントは行い、義援金窓口の情報共有と応援の呼びかけは続けるという。