経堂に拠点を置く著述家・編集者、岡部敬史さんの最新刊「くらべる京都」(東京書籍)の出版記念イベントが3月6日、経堂駅北口の「さばのゆ」(世田谷区経堂2)で行われた。
岡部敬史さん(前列・左から2人目)とイベント参加者。日本酒を手にする桂吉坊さん
岡部さんは写真家の山出高士さんと2016年、「くらべる」をテーマとする書籍シリーズの出版を開始。比べる2つの対象を見開きで配置。分かりやすい写真と文章で説明する手法で、これまで、関東と関西の文化を比較する「くらべる東西」、昭和と平成の違いが一目瞭然の「くらべる時代」、日本の地方文化の豊かな個性が分かる「くらべる日本」、じゃんけんをとっても全く異なる世界の多様性を学べる「くらべる世界」などを手掛けてきた。5冊目となる「くらべる京都」は、岡部さんが生まれ育った京都が題材。
当日のイベントでは、岡部さんが企画の経緯や内容についてのトークを行った。
「京都をテーマに本を作りたいという意識は以前からあったが、具体的な企画にならなかった。『いけるかも』と思ったのは、埼玉県に京都の嵐山に名前も風景も似た嵐山渓谷があると知ったこと。行ってみるとそっくりで驚いた。さらに調べると、他にも伊豆には渡月橋があり、千葉県の加茂川は京都の鴨川に似ており、千葉にも祇園が。歴史を調べると千年も都だった京都の文化の伝播力は相当であることも分かってきた」
「加えて京都には、東寺と西寺、西京極と東京極など対になるものが多く、おばんざいなどの食文化にも夏と冬の違い、うどんやパンなど同じジャンルにも京都ならではの違いがあり、まとまったネタになると感じた」
イベント後半には上方落語の桂吉坊さんが参加。岡部さんと京都に関するトークを繰り広げ、大師匠に当たる人間国宝、故・桂米朝さんのお供で京都を訪れた時のエピソードなどを披露した。
参加者の一人は「通常のガイドブックと違って、ページをめくりながら新しい驚きと出合える本。街の歩き方、グルメ、寺社や街の建築の見方、地元の人しか知らないレア情報もあり、この一冊を持って京都観光がしたくなった」と話す。
イベント用に取り寄せられた日本酒は京都府与謝郡伊根町の向井酒造が醸した古代米使用の「伊根満開」。淡い赤ワインのような色合いで入手困難な銘柄といわれているが、岡部さんが通う経堂駅前の居酒屋「太陽堂」で同酒造を営む一家の子弟がアルバイトをしていた縁があり提供が可能となった。
岡部さんは「東京農業大学がある経堂と京都のつながりもうれしい偶然。『くらべる』は『つながる』なのかもしれない。これからも『くらべる』をテーマに本を作り続け、世界がもっと楽しくなることを発信していきたい」と意欲を見せる。
価格は1,300円(税別)。