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次大夫堀公園民家園で正月準備 しめ縄・鏡餅作りなど始まる

鏡餅作りの様子。主屋や土蔵など年神様が訪れる場所に供える。床の間に供える鏡餅はもち米約3キロ分の大きさ

鏡餅作りの様子。主屋や土蔵など年神様が訪れる場所に供える。床の間に供える鏡餅はもち米約3キロ分の大きさ

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 「生きている古民家」をテーマに、かつての農村の暮らしや風習を今に伝える次大夫堀公園民家園(世田谷区喜多見5)は元日の1月1日に特別開園し、正月行事の解説会や正月遊び体験を予定する。

元日の特別開園日の様子

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 同園や岡本民家園(岡本2)で予定されている新年の特別開園では、正月に門松、しめ縄、鏡餅、松飾りなどを供え、一家そろって正月を祝う理由を知ることができる。

 現代の正月は、1月1日~3日の「三が日」、あるいは1日~7日の「松の内(松七日)」などの期間を指すが、かつての世田谷の農村ではもっと長かったという。伝統的な正月はその年の福徳を司る神である「年神(歳神)様」を迎える大事な行事であり、その準備を始める12月に、既に正月は始まっていた。

 毎年12月8日には「コト八日」の行事がある。疫病神が侵入しないよう、まじないとして竹の棒の先に籠をくくりつけた「目籠」を主屋の軒先に掲げる。「目籠」とは、普段の野良仕事に使う竹を編んだ網目の多い籠。網目を「目」に見立て、疫病神が目の多さを怖がって寄ってこないといわれていた。コト八日は2月8日にも行われ、12月を「コト始め」、2月を「コト納め」と呼ぶ(その逆もある)。

 12月13日前後には、主屋の梁(はり)や天井、土蔵のすす払いを行う。切り倒したばかりの竹の棒の先に笹などをくくりつけた「すす竹」を作り、いろりや炊事などでこびりついたあちこちのすすを落とし、年神様が訪れる場所を清めておく。江戸時代にはすす払いが済むと、厄年を迎える人などを大勢で胴上げする風習もあり、その様子を描いた絵なども残されている。これはすす払いと厄落としとが結びついたものといわれている。この後、しめ縄、鏡餅、門松を作り、所定の位置に供える。しめ縄は、神棚、仏壇、台所やかまどの守り神である荒神様など、神様が宿る場所への目印、結界を示すもの。鏡餅は、主屋の部屋や土蔵などに、年神様や家で祭る神仏への供物として用意するもので、大きな農家では大小合わせて数十個の鏡餅を作ったという。

 12月24日・25日には園内で門松作りを行なったが、「門松」は年神様を迎えるための目印として門口などに立てるもので、これにも新しく切り出した松や竹を用いる。年神様を迎えるために作ったすす竹や門松は、新年1月15日頃ににおたきあげ(「どんど焼き」とも)をして、その煙に乗って年神様が帰るといわれており、この日が実質的には正月の終わりになる。

 年内の開園は26日まで。元日の特別開園は10時~15時30分。2日~4日は休園し、5日から通常開園。しめ縄、鏡餅、門松、松飾りは来年の6日まで飾り、9日~11日には鏡開きを予定する。

 元日の特別開園の日には、学芸研究員による世田谷でかつて行われていた正月行事の解説会もあり、希望者には整理券を配布する。

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