下高井戸シネマ(世田谷区松原3、TEL 03-3328-1008)は1月29日から、1960~70年代にかけて活躍したフランスの映画スター、ジャン=ポール・ベルモンドの主演8作品を特集上映する。
昨年9月6日に88歳で他界したベルモンドは、ジャン=リュック・ゴダール監督・脚本の「勝手にしやがれ」(1960年)で世界的なスターとなった。それまでの映画の常識を覆す実験的な表現が話題となった同作品は、ヌーベルバーグと呼ばれる映画の革新運動の起爆剤となり、「俺たちに明日はない」(1968年)や「イージーライダー」(1969年)などの名作にも影響を与えた。
ベルモンドは、「勝手にしやがれ」の後、アクションやコメディーなどの娯楽映画にも活躍の場を広げ、スティーブ・マックイーンやクリント・イーストウッドと肩を並べるアクション界のレジェンドとなり、本国フランスではアラン・ドロンを凌ぐ人気スターとして知られる。
悪漢との格闘や空飛ぶヘリコプターにぶら下がり部屋に窓から飛び込むなどの危険なシーンでスタントマンを使わず、全て自分でこなしたことでも知られる。そのアクションの数々は、香港のジャッキー・チェン、「ルパン三世」や「コブラ」などの日本のコミックにも影響を与えた。
高いエンターテインメント性を追求した主演作の数々は世界的な大ヒットとなったが、リバイバル上映やビデオ製作などが行われなかったため、アクション俳優ベルモンドの存在感は日本では次第に薄れていった。
今回は、「大盗賊」(1961年)、「オー!」(1968年)、「大頭脳」(1969年)、「恐怖に襲われた街」(1975年)、「危険を買う男」(1976年)、「ムッシュとマドモアゼル」(1977年)、「プロフェッショナル」(1981年)の8作品を上映。
同館スタッフは「CGやデジタル技術が当たり前ではなかった時代に、自ら体を張ってこれだけの危険なアクションに挑んでいたことに驚く。往年のファンはもちろん、ベルモンド映画になじみが薄い若い方々にもぜひ楽しんでほしい」と話す。
スケジュールはホームページで告知。上映前に傑作選の仕掛人である映画評論家・江戸木純さんが解説を行う回もある。
同館は、館内でのマスク着用の徹底、整列時に間隔を空ける、ブランケットの貸し出し休止、消毒液の設置、大声でのおしゃべりの禁止、上映作品の入れ替えごとに換気の実施、発熱や咳(せき)など体調不良の人の入館禁止など、観客とスタッフの感染症予防対策を徹底して営業している。