「お雑煮研究家」の粕谷浩子さんが1月3日、カフェスタイルで地方の雑煮を食べられるイベントを経堂駅北口の「さばのゆ」(世田谷区経堂2)で開いた。
昨年11月に「日本全国お雑煮レシピ」(池田書店)を出版し、「お雑煮マニアックス」(プレジデント社)などの著作でも知られる粕谷さんは香川県生まれ。転勤族の家庭で育った関係で、幼少の頃から各地の雑煮の違いに興味を持ち、10年ほど前、全国の雑煮について聞き込みを中心とする調査を開始。雑煮の専門家として、メディア出演、講演、執筆、イベントなどの仕事を行うようになった。
粕谷さんは「正月に家庭で食べられる雑煮の文化は、山を一つ超えると具材や味が異なるなど、とても多様で面白い。その魅力に取り付かれて全国を巡り、銭湯や集会所などでおばあちゃんたちに話しかけ、その土地の雑煮について聞き取り、レシピと共に、特定の具材を使う理由や、昔からの言い伝えなどを記録する活動を続けてきた。今回のイベントは、次の世代に伝承されないと文化が消えてしまう伝統的な家庭料理を東京の皆さんに味わって知ってほしいと思い開いた」と経緯を話す。
提供された雑煮は、香川県の丸いあん餅が入った雑煮と、宮城県石巻市の山間の地域に伝わるホヤとセリ入りの雑煮。
「経堂のさばのゆは、東日本大震災で全壊した缶詰メーカー木の屋石巻水産の工場跡地に残った泥まみれの缶詰を洗って義援金と交換する復興活動が始まった場所なので、ここで石巻のホヤとセリの雑煮を食べてもらいたいと思った。石巻の日本酒、墨廼江も用意して、集まってくださった皆さんに楽しんでいただけて良かった」
会場では粕谷さんの新刊「日本全国お雑煮レシピ」の販売とサイン会も行い、用意した10冊が完売した。
「近年、昔ながらの地域の家庭料理、雑煮について知る高齢者が少なくなってきているので、かなり焦りながら調査を続けている。家庭や地域に戦前の暮らしを知るおばあちゃんがいたら、ぜひ聞き取りをして記録してほしい。私も、より多くの地域の人たちと連動して、今回のようなイベントも積極的に行いたい」とも。