渋谷で「かつお食堂」を営むかつお節伝道師・永松真依さんの新刊「かつお節を手削りする おいしい暮らし 日本の味いただきます」(主婦と生活社)のトークイベントが4月29日、経堂駅北口の「さばのゆ」(世田谷区経堂2)で行われた。
永松さんは10年前、福岡県に暮らす祖母がかつお節を削る姿に感銘を受け、かつお節を伝えることを一生の仕事にしようと決意。全国の生産者を訪ね、カツオの一本釣り漁船に乗り、かつお節の関連事業者と交流するなどして、かつお節への知見を深めた。
客の目の前で自らかつお節を削り、たっぷりとご飯にトッピングする「かつおぶしめし」やだしの利いたみそ汁などを提供する「かつお食堂」は2017(平成29)年11月にオープン。外国人観光客を含む多くの人々にかつお節の味わいと魅力を伝えるのと並行して、各地のイベントにも出向き、かつお節の手削りの普及活動も行ってきた。同書は、この10年間の集大成として、永松さんとかつお節との出会い、削り方、だしの取り方、料理への活用法、歴史や製法、種類のこと、これまでに出会った生産者の紹介などを収録している。
イベント前半は、永松さんが体験した漁や生産現場、カツオの生態の解説などの写真や図表を交えたトーク。後半は、かつお節の手削りのワークショップ。未体験の参加者も永松さんの指導により削ることができ、自ら削ったかつお節をご飯や冷ややっこなどにのせて味わった。
複数の参加者から「削りたてのかつお節のおいしさに感動した。ご飯にかけたりだしに使うだけではなく、お酒やフルーツとのマリアージュもいいと本に書いてあったので、教えていただいた道具選びのコツを参考にしながら、専門店で道具とかつお節を買って、自宅での手削りを始めてみたい」などの声が聞かれた。
永松さんは「参加者の皆さんがかつお節を日常の暮らしの中に取り入れたいという気持ちが強くなったのを感じてうれしかった。今回の本には、かつお節を使って毎日の食卓をおいしく豊かにする使い方やレシピ提案なども行っているので、参考にしてほしい。今は、自然環境の変化、生産現場の高齢化、人材不足、燃料の高騰、価格など、かつお節にとって難しい時代となっているが、本やこのようなイベントを通じて、大切な日本の文化を未来につないでいきたい」と意気込みを見せる。
価格は1,650円。