経堂駅北口の「さばのゆ」(世田谷区経堂2)が今月始めた市民講座「さばのゆ大学」の「マーケティング浪漫学部」の「授業」として8月19日、原宿の「小池精米店」3代目店主・小池理雄さんが初講義を行った。
「なぜ、その米は売れるのか?進化する原宿の米屋のマーケティング術」(家の光協会)
小池さんは、7月20日に発売されたばかりの新刊「なぜ、その米は売れるのか?進化する原宿の米屋のマーケティング術」(家の光協会)の著者でもある。聞き手となり、講義を進行したのは千歳船橋在住のマーケティング研究者で大学教授の古川一郎さん。2006(平成18)年に原宿の「小池精米店」を継いで3代目となり、米離れといわれる中、さまざまな試行錯誤や取り組みを経て、売り上げを3倍に伸ばした小池さんの現場のエピソードや実践的なマーケティング事例を引き出した。
古川さんは「商品ラインアップの少ない昔ながらの米屋の商売から、変化を恐れず、細かい市場ニーズに迅速に対応する業態に転換して、今や常時80種類の米の在庫を持ち、すし、焼き肉など個々の飲食店の料理に合う米を的確なコンサルティングに基づいて提供するビジネスモデルは素晴らしい。ロングテール理論の理想型でもあり、こだわって高付加価値のおいしい米を作る全国の農家と価値の分かる消費者とをつなぎ、たくさんのマイクロコミュニティーを作り続ける日々の活動はロマンがあると感じた」と振り返る。
講義後半には、小池さんが新刊の内容をダイジェストで紹介。参加者からの質問にも答えた。
小池さんは「原宿最後の米屋として、日々コツコツやってきたことをまとめたら一冊の本になった。斜陽といわれる米業界だが、一方でおいしいご飯を食べたいと強く欲求する人はたくさんいる。うちの近所にも、ご飯を売りにした行列のできる店が複数あり、若者たちが並んでいる。あるすし屋から『うちのすしにあうシャリが欲しい』と言われ、米のセレクトとブレンドを提案すると、その店のお客さまから好評を頂き、さらに複数のすし屋と付き合いが生まれたケースもあった。顧客の厳しい要望に合わせて性格の異なる米をブレンドできるのは、米を熟知した米屋ならでは。それがスーパーなど量販店との差別化戦略を可能にする。消費者の嗜好(しこう)に細やかに対応すれば、おいしい日本の米は必ず愛されるし、実際、世界でも人気が高まっているので、日本の米は可能性がある」と話す。
講義後、小池精米店で最も高額という岐阜県産の米「銀の朏(みかづき)」を炊いたご飯と、ご飯のお供8種を添えたプレートを食べながら懇親会も行われた。