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春日部のスーパーの総菜部長が経堂で講義 小規模店のサバイバル術披露

左から古川一郎さん、河内みどりさん、直井智子さん

左から古川一郎さん、河内みどりさん、直井智子さん

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 経堂駅北口の「さばのゆ」(世田谷区経堂2)が開いている市民講座「さばのゆ大学・マーケティング浪漫学部」の授業で10月8日、埼玉県春日部市にある「みどりスーパー」の河内みどりさんが講義を行った。家族経営の小規模スーパーマーケットの地域におけるサバイバル術を披露した。

春日部産のケール(そこらへんの草)を使ったビリヤニプレート

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 1972(昭和47)年に創業した同店は、70~80年代を通じて東京のベットタウンとしてファミリー層の人口が増えた周辺地域の顧客をつかみ、順調な経営を続けていた。しかし、バブル崩壊後の90年代以降、若い世代の都心回帰による人口減少、ロードサイドの大型店増加などにより、次第に経営環境が厳しくなった。河内さんは大学卒業後、流通業界の会社員として働いていたが、同市内に大型ショッピングモールが開業した2012(平成24)年、実家が経営する同スーパーに加わり、総菜部を立ち上げた。

 聞き手となり、講義を進行したのは千歳船橋在住のマーケティング研究者で大学教授の古川一郎さん。ユニークなアイデアを実践して、ピンチをチャンスに変えたエピソードや実践的なマーケティング事例を引き出した。

 河内さんは「みどりスーパーに入社した頃、客数と売り上げの減少は深刻だった。しかし、近隣に一人暮らしの高齢者が多いので総菜の需要があると感じた。総菜は近くの飲食店とコラボして話題づくりの材料にもなると考え、生き残るために、とにかく面白いことをしようと思った。試行錯誤するうち、2019(平成31)年、閉店した市内のパン店の人気メニューだったプリンパンを復活させ『春日部ぷりんパン』として売り出すとメディアにも取り上げられ、良い売れ行きとなった」など、活動初期の成功事例から講義を展開した。

  同スーパーの名前が広く知られるようになったきっかけは、2019年に公開された魔夜峰央(まやみねお)さん原作の映画「翔んで埼玉」。映画の「埼玉県人には『そこらへんの草』でも食わせておけ」というせりふに着目した河内さんは、地元産のアシタバなど「そこらへんの草」を使った商品を開発し販売。2022年春に「そこらへんの草天丼」の販売を新たに始めると、4月1日のエイプリルフールのネタとしても話題となり、地元のネットニュースの記事をはじめ多くのメディアに取り上げられ、県外からも人が集まるようになったという。

 古川さんは「逆境にもめげず、地域の高齢者の総菜需要に応えながら、ユニークでタイムリーな商品を投入して、メディアを引き寄せ集客を成功させた実話には驚いた。さらに素晴らしいのは、自分の店だけでなく、近隣の複数の店にも『そこらへんの草メニュー』の導入を呼びかけ、ネットワークを作ったこと。スタンプラリーなどを開いて、参加店の集客と売り上げアップにも貢献。立ち上げても短期間で終わってしまう取り組みが多い中、継続する工夫と努力にも見るものがある。小さな店や人のつながりからなるマイクロコミュニティーを育てながら、地域を活性化する活動はロマンがあると感じた」と振り返る。

 講義には、みどりスーパーの活動について取材を続けてきた地元メディア「春日部経済新聞」の直井智子編集長も参加。直井さんは「みどりさんとの出会いは2018(平成30)年。春日部市の隣町、越谷市の北越谷にある専門店のギョーザを挟んだパン『北越ギョウザパン』を売る店があると聞き、取材したのが最初だった。ユーモアのあるネーミングと、他店とのコラボ商品を通じて地域にお金を回そうという姿勢が面白いと思った。『そこらへんの草天丼』がブレークした後も、一つの成功に安住せず、どんどん新しい試みを打ち出し、今では活動の輪が地元の介護施設、小中学校などを巻き込み広がっているので目が離せない」と話す。

 講義後、河内さんが持参した春日部の「そこらへんの草」を使った総菜などを盛り合わせたビリヤニプレートを食べながら懇親会も行われた。

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