今年、創立135周年を迎えた東京農業大学。世田谷キャンパスの学園祭「収穫祭」には、経堂エリアの住民をはじめ、遠方からも多くの人が訪れ、例年約8万人が来場します。学生たちは模擬店や文化学術展の準備を進めています。この特集では、その中から経堂経済新聞が注目した企画を紹介します。

「緑の家」
自分たちの畑を持ち、週末に季節の野菜づくりを土づくりから収穫まで体験できるサークル。毎年、約50品目の野菜を種から学生だけで管理・栽培。土を良くするための堆肥を馬ふんから手づくりしたり、発芽を促す温床を自作したりと、学生自ら工夫を重ねながら活動しています。
【お話を聞いた人】
栗原夏美さん(「緑の家」家長/国際農業開発学科)写真右
松田七海さん(「緑の家」収穫祭学生責任者/生産環境工学科2年)写真左
収穫祭の即売店部門では「最優良店賞」や「優良店賞」を何度も受賞し、早めに売り切れてしまうことも多い「緑の家」の野菜。収穫祭に向けた準備と、普段の活動について話を伺いました。
終電で畑へ。鮮度を求めて「深夜収穫」
「緑の家」では、収穫祭にできるだけ新鮮な野菜を届けるため、深夜に収穫することが恒例になっています。メンバーが畑に集まるのは前日の終電ごろ。深夜2時に収穫を始め、朝6時まで作業を続けます。

頭にヘッドライトを装着して収穫作業するメンバーたち(画像提供=緑の家)
採れたての野菜を軽トラックに積み込み、町田市の畑からそのまま大学へ。朝7時からの販売準備に間に合わせます。収穫祭の期間中は、メンバーを交代しながらこれを三日三晩繰り返します。

安全を考慮し、二人体制で「軽トラ係」を配置する(画像提供=緑の家)
この「深夜収穫」を楽しみにしているメンバーも少なくありません。午前中の販売シフトに入っていなくても、つい張り切って寝ないまま模擬店に顔を出しに来てしまうメンバーもいるといいます。

昨年度の模擬店の様子(画像提供=緑の家)
一方、運営側にはシフトづくりの苦労もあります。メンバー97人の予定を聞き、そのうち収穫祭に参加する70人以上の休む時間も考えながら組む綿密なシフト表。「昨年作ってみて初めて、アルバイトを束ねる世の中の店長の大変さが分かった」と笑う栗原さん。野菜作りだけでなく、大勢で一つの売り場を動かすことも、収穫祭で経験する大切な仕事の一つです。

睡眠や休憩のタイミングまで考慮された綿密なシフト表(画像提供=緑の家)
今年のお薦めは「ニンジン」と「スイスチャード」
今年、特に力を入れているのはニンジン。昨年ニンジンがうまく育った成功体験から、畝の数を3~4倍に増やしたといいます。予定収穫数は100~150本。「根菜類は、収穫してみるまで数が読みにくい」と栗原さん。
もう一つのお薦めは、茎の色が鮮やかなスイスチャード。見た目の華やかさに加え、苦みや癖が少なく、食べやすい野菜だといいます。松田さんお勧めの食べ方は、ツナと一緒にごま油で炒めること。サラダにすれば彩りも楽しめます。

色とりどりの茎が目を引くスイスチャード(資料画像)
そのほか販売するのは、自分たちで育てたツルムラサキ、ハツカダイコン、ほうれん草など。さらに、普段実習先やお手伝い先としてお世話になっている北海道や黒川、町田の農家からも野菜を預かり、全体では15~20品目ほどを並べる予定です。
土をつくって、育てて、みんなで食べる
普段の活動は土づくりから。堆肥も自分たちで仕込みます。畑近くのカントリークラブからもらった馬ふんに、米ぬかや鶏ふんを重ね、ブルーシートをかけて発酵させます。堆肥係を中心に、週に1度混ぜ直す「切り返し」を行いながら、野菜を育てる土を準備しています。

授業やアルバイトの合間を縫って作業するメンバーたち(画像提供=緑の家)
「収穫後には、採れた野菜をみんなで料理して楽しむ時間も大切にしている」と栗原さん。夏野菜が採れたらピザ、タマネギが採れたら親子丼、キャベツが採れたらお好み焼き、大根が採れたら鶏大根。その日の収穫が献立につながります。

収穫したピーマンなどで作った夏野菜ピザ(画像提供=緑の家)
野菜のこと、売り場で聞いてください
収穫や袋詰めと並行して進めているのが、販売する野菜についての下調べ。栄養や品種ごとの特徴、お薦めのレシピを調べ、来場者に分かりやすく伝えられるよう、POPや「事前シート」にみんなでまとめています。

POPや装飾は1年生が担当する(画像提供=緑の家)
「緑の家」が目指しているのは、野菜を買ってもらうだけで終わらない売り場。どんな料理に使うのか、どう食べるとおいしいのか。そんな質問にも応じられるよう、メンバーそれぞれが準備を進めています。

栄養面や調理方法などを調べてPOPに反映する(画像提供=緑の家)
「『昨年の〇〇がおいしかったからまた買いに来たよ』『ポテトサラダにするなら、こちらの品種がお薦めですよ』『じゃ、それにするわ』など、お客さまと会話が生まれていくのがうれしい」と語る栗原さん。収穫祭では、野菜の選び方やお勧めの食べ方を、メンバーに尋ねてみてはいかがでしょうか。
収穫祭は10月30日~11月1日、東京農業大学世田谷キャンパス(世田谷区桜丘1)で開催。開催時間は9時~17時。