特集

東京農大「収穫祭」特集《vol.004》/農味噌 受け継がれるみそづくり

 今年で創立135周年を迎えた東京農業大学。世田谷キャンパスの学園祭「収穫祭」には、経堂エリアの住民をはじめ、遠方からも多くの人が訪れ、例年約8万人が来場します。学生たちは模擬店や文化学術展の準備を進めています。この特集では、その中から経堂経済新聞が注目した企画を紹介します。


「醸造科学科統一本部」
 収穫祭に向けて活動する東京農業大学応用生物科学部醸造科学科にひもづく学生団体で、収穫祭を盛り上げていくためにいくつかの部門に分かれて活動しています。模擬店部門は毎年、学生の手でつくった発酵食品のみそを販売しています。

【お話を聞いた人】
北嶋桔蘭さん(醸造科学科統一本部 模擬店部門 店長/醸造科学科)
野尻結華さん(醸造科学科統一本部 模擬店部門 副店長/醸造科学科)

 収穫祭といえば醸造科学科統一本部のみそと認識している方も多い。名物となっている「農大生仕込み味噌」。収穫祭に向けてどのようにみそをつくっているのか話を伺いました。

 

伝統のみそ、「農味噌」

 醸造科学科がいつ頃から収穫祭でみそを売り始めたのかは定かではありませんが、現在は茨城県牛久市にある「ヤマイチ味噌(みそ)」に通い、実習として農大生が自ら仕込み、掘り出しを行ったみそを販売しています。このみそは「農大生仕込み味噌」、通称「農味噌(のうみそ)」と呼ばれ親しまれています。


農味噌

 ヤマイチ味噌の坪井孝賢(たかまさ)代表取締役によれば、2009(平成21)年から農大生が「ヤマイチ味噌」で実習としてみそを仕込み、そのみそを収穫祭で販売し始めたという。農大生が同社で仕込んだみその販売は今年で17年目になる。
 
 今年、当学科の模擬店責任者(店長)となった北嶋さんは言います。
 
 「収穫祭では何年も、何十年も、多分、私が生まれるずっと前からみそを売っています。そして醸造科学科という少し変わったことを学んでいる学科が、特別なみそをつくることには価値があると思っています」


 
2025年の収穫祭の模様(画像提供=同団体)


 農味噌は約3カ月程度熟成して出来上がる、割と早熟なみそだという。仕込みは最初、蒸した大豆を窯から取り出し、つぶし、こうじと混ぜる。さらに塩と水を混ぜ込んでタンクで受け、タンクから木おけに少量ずつ移し、足で踏み込みながら空気を抜くことで腐敗しないように熟成させます。

木桶の踏み込み(画像提供=同団体)

醸造科学科の1年生が受ける「洗礼」

 今年で3年目となる店長、副店長の2人に「みそづくりにおいて最も大変な工程は何か」と尋ねると、「掘り出しだよね」と顔を見合わせて含み笑い。

 実習では6~7月に仕込みを行った後、8月末に熟成させたみその掘り出しを行います。仕込みは学科2~3年生が担当しますが、掘り出しは後から入部してきた1年生が担当。これがとにかく大変なのだとか。

 「重いんです。みそって発酵する過程でちょっと水分が出ますが、その水分が出た状態で半泥状の部分もあるので。それを人の背丈よりも大きい2メートル以上もある木おけの中から掘り出さないといけない。下から持ち上げないといけないので、肩がすごく痛くなるんです」
 

掘り出し(画像提供=同団体)
 

 さらに、みその上に立って掘り出し作業を進めるので、身長よりも高い底なしの様なみその中に埋まって抜け出せなくなってしまう事も。醸造科学科統一本部に入部した1年生の数は少なくないが、木おけの中に入れる人数は一度に2人に限られるため、ローテーションでこの作業を繰り返さなければいけないという。そうした作業を朝9時ごろから15時ごろまで2日間通って行うと、心が折れてしまう学生も出てくるという。まさに伝統の洗礼なのだとか。

 

伝統を守り、新しいお客さまにも

 「やっぱり収穫祭の一番の目玉商品だと私たちは言い張りたいです。醸造科学科が何を学び、これをどういかしているのかを形にしている商品なので、ぜひ、近所や友人、親戚の方などいろいろな方々に知ってもらえたらうれしい」と店長の北嶋さんは意気込みます。

 とがった塩味などクセがなく、まろやかな甘みもあるのでみそ汁や野菜ディップに使ったり、チーズケーキに混ぜたりしてもおいしく、「何にでも合って万能感があるみそ」だと言います。

 コロナ禍以降は農味噌のみの販売だったが、昨年からしょうゆや酢など新しい商品も販売しています。「いろいろな新しい商品が手に取れてうれしい」という声もいただいたといいます。「今まで購入していただいた昔からのお客さまにも愛されるようにしていきたい」と副店長の野尻さん。

左から副店長の村山宗康さん、店長の北嶋さん、副店長の野尻さん

 

手に入れる際の注意点

 農味噌は今回、4500個ほどを販売予定。1人5個まで購入可能で、先着順に購入できるわけではないので正門などでの順番待ちはしないでほしいとの事です。

 そのほか、整理券配布などの農味噌購入に際してのルールの詳細は収穫祭のホームページで確認できる。


 

 収穫祭は10月30日~11月1日、東京農業大学世田谷キャンパス(世田谷区桜丘1)で開催。開催時間は9時~17時。