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東京農大「収穫祭」特集《vol.002》/「ジビエラーメン研究所」の挑戦

 今年で創立135周年を迎えた東京農業大学。世田谷キャンパスの学園祭「収穫祭」には、経堂エリアの住民をはじめ、遠方からも多くの人が訪れ、例年、約8万人が来場します。この特集では、学生たちが準備を進める模擬店や文化学術展などの中から注目の企画を紹介します。

「ジビエラーメン研究所」
 北海道・オホーツク地域を拠点に、エゾシカ肉を使った商品開発に取り組む学生団体。捕獲後、十分に活用されず廃棄されるエゾシカの有効活用を目指しています。ジビエを初めて食べる人にも親しみやすい味付けを工夫し、食を通じて鳥獣被害や資源活用の課題を伝えています。

【お話を聞いた人】
矢野那菜さん(4代目代表/海洋水産学科4年)
中村千春さん(5代目副代表/食香粧化学科3年)
田島脩太郎さん(5代目副代表/北方圏農学科3年)

 収穫祭には、北海道のオホーツクキャンパスからメンバー12人が飛行機で駆け付け、エゾシカ肉を使ったメニューを提供します。出店に向けた準備や、活動に込める思いを聞きました。

「もったいない」を「おいしい」へ

 同団体は、「北海道では処分されてしまう鹿が多く、食べられる資源なのに廃棄されるのはもったいない」という考えから、6年前に発足しました。捕獲されたエゾシカを地域の資源と捉え、肉を使った商品開発を通じて、その有効活用を目指しています。4代目代表の矢野さんは「まずは鹿のおいしさを皆さんに知ってもらいたい。エゾシカ肉の脂の甘みやかみ応え、鉄分豊富な栄養価などの魅力を伝えたい」と話します。


「流氷祭り」など北海道の各イベントで活躍する(画像提供=同団体)

みそラーメンと新作の焼きうどんを提供

 3年前にレシピが完成したという「みそラーメン」は、鹿肉を初めて食べる人にも親しみやすいよう、3種類のみそをブレンドしたマイルドな味わいが特徴です。スープには鹿の骨から取っただしを使い、チャーシューには、脂の甘みが強いというバラ肉を使用。チャーシューを焼く際に出る脂もスープに加え、コクとうまみを出しているそうです。


北海道産「白みそ」をベースに、麦みそと八丁味噌をブレンドしたスープ(画像提供=同団体)

 今年の収穫祭で初めて提供するのが新作の「鹿ジンギスカン焼きうどん」です。北海道には鶏肉や豚肉を使うジンギスカンもあることから、「鹿肉のジンギスカンもありなのでは」という発想で開発しました。

 開発では、タレが焦げ付きやすいことが課題になったといいます。中村さんは「水で薄めたり、焼き方や火加減を調整したりと試行錯誤を繰り返しました。卒業した先輩にも相談しながら5?6回の試作を経て、たくさんの人に何度も試食をしてもらって、ようやく納得のいく味にたどり着いた」と振り返ります。

 提供数は「みそラーメン」が1000杯、「鹿ジンギスカン焼きうどん」が1600食を予定しています。


昨年の世田谷キャンパス初出店の賑わい(画像提供=同団体)

 

道内の食肉処理業者や農家と連携

 活動を支えるのが、北海道内の食肉処理業者や農家とのつながりです。メンバー自身が狩猟をするのではなく、鹿肉やだし用の骨は道内の業者から仕入れています。工場見学などを通じて業者と直接話し、互いの考え方を知ることも大切にしているといいます。


北海道の鳥獣被害を大きく占めている鹿(画像提供=同団体)

 矢野さんは「『鹿をおいしく届けたい』という思いを共有できるパートナーを選び、利益優先ではなく、味に誇りを持って取り組む業者から肉やだし用の骨を仕入れている」と話します。

 野菜の調達にも、日頃のつながりを生かしています。メニューに使うタマネギは、メンバーがアルバイトをしている地元の農家から直接仕入れています。学生たちが普段から農作業に関わる中で築いた、生産者との関係が出店にもつながっています。

遠方からの出店、知恵を出し合い準備

 北海道からの出店では、移動や食材の輸送に加え、費用の負担も課題になります。準備に必要な費用は、メンバーがお金を出し合い、販売による売り上げで回収する仕組みです。


食材を調理するメンバーの様子(画像提供=同団体)

 矢野さんは「オホーツクキャンパスから世田谷キャンパスへの出店は、自分たちでお金を出し合って準備しているので、正直プレッシャーも大きいです。売り上げがないと自分たちのマイナスになってしまうので、絶対に成功させなきゃという思いがある」と話します。

 普段とは異なる会場での調理にも、工夫が必要でした。矢野さんによると、世田谷キャンパスではバーナーが使えません。鹿の脂は冷えると固まってしまうため、チャーシューを温かい状態で提供する方法をメンバーで検討。話し合いの末、提供前に鉄板でチャーシューを温める方法を考えたといいます。

バラ肉の鹿チャーシュー。普段はバーナーで炙る(画像提供=同団体)


 オホーツクキャンパスでの収穫祭を終えたばかりの田島さんは「後輩たちが考えてくれたアイデアを、なんとか形にしてあげたくて。後ろから背中を押すような気持ちでサポートしてきた」と話します。個性豊かなメンバーが集まり、時には意見がぶつかることも。その都度、互いの考えを出し合い、納得するまで話し合いを重ねているといいます。


オホーツクキャンパスでの賑わい(一昨年の様子)(画像提供=同団体)

北海道から、売り場で伝えたいこと

 「東京ではなかなか北海道のエゾシカは食べられないと思うので、ぜひ食べてほしい」と話す3人。収穫祭では、調理を担う学生たちから、北海道での活動やメニュー開発の話を直接聞けるのも楽しみの一つです。

 収穫祭は10月30日~11月1日、東京農業大学世田谷キャンパス(世田谷区桜丘1)で開催。開催時間は9時~17時。